興味津々

至福の時を過ごそう

三渓園と隣花苑

池波正太郎の「食卓の情景」に「横浜の一日」という章がある。男四人で本牧の「燐花苑」に出かけ飯を食う話である。

この燐花苑には一度行ったことがある。年末も押し迫った頃、「バラが咲いた」で一世を風靡したマイク真木のライブがここであり、先輩に誘われて行ったのである。燐花苑は、三渓園の近くにある古民家のお料理屋さん。

「食卓の情景」によると三渓園は、原三渓こと原富太郎が明治三十九年初夏に開園した庭園で、江戸初期の紀州徳川家の別邸であった「臨春閣」をはじめ重要文化財視点の建物が散財している庭園である。原翁は今日の日本画壇にも多大な影響を与えた美術愛好家として有名である。

この三渓園に隣接してあるのが燐花苑で、ここのお料理は、お刺身、野菜の煮物、揚げ物など昔の趣のある家庭料理で、中でも原三渓翁のお好みであったという三溪そばという汁なしそばが有名である。庭を眺め、落ち着いた趣のある調度品を眺めながらゆったりとした時間を過ごすと、池波正太郎が食を楽しみ、酒を楽しんでいた頃にタイムスリップする。

今から思えば「食卓の情景」を読んでおけば、お料理の味わいもさぞ変わっていたことと思う。

 

池波正太郎「食卓の情景」

 

 

本牧燐花苑はここ ようこそ隣花苑へ